バヌアツの民話 「Nabanga」について   2007/4/11 (2010/12/28 再編集)

小生の手元に「Nabanga」という出版物がある。バヌアツで刊行された本にしては、ぶ厚くて立派なものだ。Nabanga はガジュマル。熱帯特有の寄生植物で、歳ふると気根をたらして巨木となる。バヌアツでは、どこの集落でもガジュマルの巨木が広場の一隅を占め、ヌシとして村人の暮らしを見守り続けている。

バヌアツには文字が無かった。1980年の独立以前に、フランス人居留者がバヌアツ各地の古老から聞き取った民話を、フランス語版「Nabanga」として刊行していた。村特有の伝統語で伝えられてきた話がビシュラマ語で収録され、それがフランス語の本になり、更に英語版となったものである。(英語版は2005年にEUの援助により、バヌアツ民族博物館が刊行)

言語はその国の文化そのものだから、言語が変われば伝わる内容も違ってくる。伝統語で語られた民話が本になるまでの過程は、例えてみれば、トロ寿司にケチャップをかけ、せいろで蒸したものを、更にチンしたようなもので、元の味わいや風味は飛んでしまうし、余計な味もつく。英語版を読んだ感想を正直に言えば、白人による収録の過程や、何度も翻訳が重なる中で、ストーリーが化けてしまったところもありそうだ。それでも、バヌアツ人の間でどんな話が伝わってきたのか、知ることは楽しいし、日本の神話や民話とそっくりなストーリーに出会うと、有史以前にバヌアツと日本に交流があったという説を信じたくなる。

この本を入手したのは、帰国も間近になってのことだった。ボランテイア仲間が「バヌアツ史」の和訳出版を進めていたので、小生はこの民話集の和訳出版を夢見たが、シロウトには荷が重過ぎるとわかった。本欄での和訳掲載は「紹介記事」の趣旨であり、原作著作権への配慮はあえてズボラをお許しをいただきたく、また読者各位による転載や出版等はご遠慮いただきたい。


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バヌアツ民話に出てくるキーワード

ナカマル 本来は、集落の男たちの集会所。現在はカバを飲ませる「飲み屋」(カバ・バー)を指すことが多い。その他、普通の家の「客間」を指すこともあるようだ。
カバ 胡椒科の植物の根から抽出した飲み物。伝統的には、カバの根を噛み、吐き出したものから絞り出した液体を飲用する。現在は、根をすり潰したものを水と混ぜて絞り出して製造する。元々は儀式に用いられ、男性だけに飲む事を許された。アルコールと同様の酩酊状態をもたらすが、強力な鎮静作用があり、ヨーロッパでは精製されたカバが鎮静剤として処方されている。
ラプラプ バヌアツの代表的な伝統料理。元々は、日本の赤飯と同じように、祭礼や特別のもてなし料理だったようだ。ヤムイモ(里芋)をすりおろし、ココナツのクリームとミルクを混ぜて葉に包み、焼けた石の囲炉裏で蒸し焼きにする。中に魚や肉を入れることもある。食感は「ういろう」に似ている。